KIGの古田です。今回は、「統計」から「統計学」が生まれてきた背景について説明していきます。

 

既に述べたとおり、統計は、人やものなどを集計して様々な施策の判断資料となるものでした。時代が進んで、17世紀のイギリスにおいて、これまでの統計の考え方とは違う考え方が生まれました。

 

当時、ロンドンの商人であったグラントが、1662年に「死亡表に関する自然的および政治的諸観察」を著しました。この本には、当時市販されていた死亡表を精密に観察して数枚の表に要約し、その結果から導出された人の出生・死亡に関する法則が書かれています。

 

この本の意義は、大量のデータを要約して有用な情報を抽出し、それから自然的・社会的法則の発見につなげ、更には将来の指針を決定出来るという、現代の統計学の考え方が生まれたことにあります。すなわち、統計学という、統計情報を生成するための理論体系が構築されるようになったというわけです。

 

19世紀に入ると、数学的定式化を背景として統計学が飛躍的に発展します。例えば、ベルギーの天文学者・数学者であるケトレーが「人間について」を刊行しました。その中で彼は、人間に関する現象の中に法則を発見するためには、数多くの事象を観察した上で、帰納的に推論すべきことを主張しました。

 

このことは、人口が増え、状況が複雑化していく中において意思決定を行う上では、諸事象を包括する一般法則が要請されていたことを意味します。そして、この要請は現代の統計学に対してもそのまま引継がれています。

 

ここまで、「統計」とは何かから、「統計」と「統計学」の違い、「統計学」が生まれてきた背景を説明してきました。「統計」、「統計学」それぞれ言葉の意味は違いますが、その目標とすることは同じです。すなわち、どちらも意思決定を目的としていることです。より確からしい意思決定を行うために、「統計」や「統計学」が存在します。次回は、統計学を現実にどう使えばいいかについて説明していきます。