KIGの古田です。今回から3回に分けて、統計学について説明いたします。

統計とは、結局何なのでしょう?一言で言えば、統計とは「合理的と思われる意思決定を行うために必要な情報の一つ」です。統計学を勉強するに当たっては、この点をまず押さえておかなければなりません。

 

統計学の入門書を書かれるような方々は、学問として統計学を捉えているので、このことは意外に書かれません。そのような方々が、統計学初心者に教えるに当たって真っ先に考えることは、難しいと思われている統計学を如何に分かりやすく書くかについてです。もちろん、難しい数式を分かりやすく説明することは大事です。

 

一方で、その前提となる統計の目的を説明しなければ、統計学を理解したとは言えません。事実、私はこれまでの入門書を読んだ限りでは、統計学が腑に落ちたとは言えませんでした。確かに、平均や標準偏差の計算方法は理解できます。問題は、それらが現実の問題を解決する上でどう役立つのかが見えなかったことです。

 

冒頭で述べた答えに到達して、ようやく統計学の理解が進みました。そこで本文では、回りくどくなることを承知の上で、この点をしっかり説明していきます。

 

統計の歴史を紐解くと、統計資料は有史以来存在していました。言い換えれば、統計資料そのものが“歴史”といえます。例えば、紀元前31世紀頃の古代エジプトにピラミッド建設のために行われた統計資料があります。また、紀元前20世紀頃の中国・殷王朝時代では国勢調査が行われました。

 

では何故、そのような昔から統計資料が存在したのでしょうか?それは、その当時の政権が、合理的と思われる施策を実行するための判断根拠を欲していたからです。先の例で言えば、古代エジプトにおいては、ピラミッド建設が可能かどうかを判断するために統計資料が用いられ、中国・殷王朝においては税収や動員可能兵士数を把握するために国勢調査が行われました。統計が、合理的と思われる意思決定を行うための情報の一つというのは、こういったことを指すのです。

 

お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、本文では「統計」という言葉と「統計学」という言葉が出てきています。この二つの言葉は、似ているようで微妙に違います。今回、お話しているのは、実は「統計」についてで、厳密には「統計学」の説明ではありません。すでに説明したように、「統計」は情報の一つです。では、「統計学」はというと、「統計」という情報を生成・加工するための理論体系です。次回は、「統計」から「統計学」が生まれてきた背景について説明していきます。