HACCPは先進国を中心にHACCP導入の義務化が進められており、今や食品衛生管理の国際標準となっています。国内では広域的な食中毒事案が発生し、より一層の食品安全の確保が求められる中、2018年6月13日、HACCPが義務化されました。これにより全ての食品事業者が、HACCPによる衛生管理を求められるようになりました。

法的な制度化に加え、欧州や北米を中心とする海外ではHACCPの導入がすでに義務化されており、HACCPが導入された事業所で製造された食品以外は輸入しない、など、食品事業者の経営戦略や販路開拓の観点からも、食品事業者にとってのHACCP導入は喫緊の課題となっています。また、2020年の東京オリンピックの開催もHACCP導入制度化を後押ししています。

 

HACCP義務化の中身

  1. 対象となる事業者は、製造・調理・加工・販売などを行う全ての事業者です。
  2. HACCPの制度化は、認証取得を求めていません。HACCPに基づく衛生管理手法の導入が求められています。事業所の規模や業種によって2種類あります。
  3. 営業許可の届出や更新、定期的な査察の際に、HACCPに則った衛生管理が行われているかどうかを、地元の保健所の指導員が確認します。
  4. 「HACCPに基づいた衛生管理手法を導入していない」という理由での罰則はありません。ただし、営業許可が出ない、実際に食中毒事故が発生した際の営業停止などの行政処分が下されます。一番多いパターンは定期的な査察で指導員が不具合を指摘し、事業者は期日までに改善し報告する、という、これまでと同様の査察が行われます。監査の視点が「HACCPに基づいた衛生管理が成されているかどうか」になります。
  5. HACCPで求められる管理基準は、事業所の規模や取り扱う食品の種類に応じて2種類が設けられています。A基準(一般的衛生管理+コーデックスHACCP7原則に即した管理基準)とB基準(一般的衛生管理+HACCPの考えを取り入れた衛生管理)。
  6. 大・中規模事業所、と畜場、食鳥処理場は、A基準が求められます。
  7. 小規模事業者、販売店の店内での製造・加工業者、提供する食品の種類・変更が多い事業者等には、B基準が求められます。
  8. 食品衛生法の改正が公布された2018年6月13日から2年以内に、HACCPの制度化が施行されます。施工後は1年以内に体制を整える必要があります。

 

HACCP導入のメリット

  1. 自社商品の海外への販路拡大の土台となります。
  2. 品質に対する信用力が強化され、国内での売上アップの可能性が高まります。
  3. 従業員の衛生教育が進みます。
  4. 食品の廃棄ロスが減少し、原材料費や廃棄費用が減少します。収益の改善が期待できます。
  5. クレームが減少します。またロットトレースが強化され、クレーム対応のスピードや内容が向上します。

HACCPの考えを取り入れた衛生管理ってなんやねん!?

小規模事業者や取り扱う食品の種類が頻繁に変更となる事業者には、「HACCPの考えを取り入れた衛生管理」、つまり基準Bが求められます。この微妙な言い回しの意味は何なのか!?わかりやすくまとめると次のようになります。

 

  1. 認証制度ではありません。計画をつくり運用し、ちゃんとやってるよーと、保健所に説明できればいいです。
  2. コーデックス7原則に則ったガチガチのHACCPシステムの構築は求められていません。
  3. 一般的衛生管理が基礎になります。これはガチガチHACCPと同じです。
  4. 危害分析をちゃんとやります。そしてCCP(重要管理ポイント)を決めます。

 

これまでの厚労省都道府県が認証してきたHACCPと比較して、求められるレベルはかなり簡素化されています。そして、厚労省も小規模事業者の負荷を考慮して、各業界団体が作成した手引きをホームページに掲載しています。

 

今回は、日本豆腐協会が作成した手引書の中身を確認していきます。HACCP義務化で実施するべきことは次の3つです。

 

  1. 衛生管理計画の作成
  2. 計画に基づく実施
  3. 確認・記録

 

1.衛生管理計画

衛生管理計画は、①一般的衛生管理計画の作成と、②重要管理ポイントの決定、の2つがあります。一般衛生管理は、従業員の衛生教育、防虫防鼠の管理、クレーム発生時の対応方法など9つの管理項目があります。一般衛生管理の詳細については改めて記事を投稿します。そして重要管理ポイントについては、ブロックフローの作成危害分析の工程を経て、重要管理ポイントを決めていきます。

 

2.計画に基づく実施

文字通り、「衛生管理計画」を粛々と進めていきます。そして、計画は実施して初めて効果のある計画かどうかが分かります。従業員の健康チェック項目に追加すべきことが増えた、防虫防鼠の定点観測の場所を変更する必要性が生じた、重要管理ポイントにした工程は、一般衛生管理をしっかり行うことで品質事故を防止できるようになった、など、状況に応じて計画をブラッシュアップしていきます。

 

3.確認・記録

「衛生管理計画」を計画通りに進めていることを第3者(保健所や認証機関)に示すためには、記録が必要です。記録は、衛生管理計画に基づいたもので、日報や週報・月報、チェック表などが挙げられます。これらは5W1Hが記録できるようなフォーマットにします。いつ、誰がチェックし、管理項目がどのような状態だったのか(従業員の健康状態がどうだったのか、冷蔵庫の温度がどうだったのか、異常時の対応は誰がどのように行ったのか)を記録します。そして記録書を責任者が確認し検証します。計画の変更が必要であれば柔軟に変更し、新たな計画(ルール)に落とし込みます。

具体的な記録書については、業界団体が作成した手引書内にサンプルが示されています。

このように、HACCPの考えを取り入れた衛生管理、とは、①一般衛生管理と重要管理点について確認頻度や方法・異常時の対応方法を決める、②粛々と計画通りに運営し、必要に応じて計画や確認頻度・方法を変更、③記録をきちんと残す、を繰り返すことです。これはガチガチHACCPでも同様です。

KIGは導入後を見据えたHACCP導入パッケージを用意しています!

今回はHACCP義務化の背景や詳細についてのお話でした。HACCPは導入よりもむしろ、システムを維持していくことに多大な労力を要します。それは衛生管理計画、重要管理ポイントのモニタリングの要所で記録が必要だからです。経時のモニタリングや紙への記録、記録書の保管は本当に大変で、それが原因でHACCPシステムが形骸化することもあります。

KIGではHACCP導入支援だけではなく、各種センサー(温度・圧力・流量等)からのデータの自動取得やタブレット端末を用いたペーパーレス化などのIT技術を取り入れた、運用時の省力化を見据えたパッケージを用意しています。そして、ものづくりに精通した私たちKIGメンバーは、HACCPを足掛かりに、加熱・冷蔵・冷凍の効率化、使用水量の適正化などの省エネの推進、品質不良によるロス削減などを通じて、QCDの改善から御社の経営改善に繋げていきます。是非、ご相談下さい。